恥の多い生涯を送っています

太宰治をこよなく愛する読書家の峻が綴る日記です。

謙虚なふりはもうやめなよ

こんばんは。
峻です。


本日の「作品」×【テーマ】はこちら、

ろまん燈籠・太宰治」×【真の謙虚さを知る】


対人関係でうまくいかずに悩んでいる人はぜひ。
感情に振り回されてしまう人にも。

自分では解決方法がよくわからない人におススメします。

これはロマンスと文芸が好きな5人の兄弟が
1つのお話をリレー形式で書いた小説です。

書いたのは太宰一人なんですが、
彼は他者の視点に立って文章を書くのが大の得意です。

(女性の日記読みこんで本音知りまくってる人はなかなかいないんじゃないかと思います。加えて人間観察が得意だったのだと思います。)


この話の面白いところは、
話が脱線してしまったところに太宰なりの愛に対する意見であったり、

面白い視点で人間観察した内容をちりばめているところです。

実際に読んでみるとかなりたくさん脱線していて面白いなぁと
感じます。
中でも1番面白いと思う点を引用して、自分なりの感想を書きます。

以下引用、

 

ラプンツェルは、たしかに、あきらめを知らぬ女性であります。死なせて下さい、等という言葉は、たいへんいじらしい謙虚な響きを持って居りますが、なおよく、考えてみると、之これは非常に自分勝手な、自惚うぬぼれの強い言葉であります。ひとに可愛がられる事ばかり考えているのです。自分が、まだ、ひとに可愛がられる資格があると自惚れることの出来る間は、生き甲斐もあり、この世も楽しい。それは当り前の事であります。けれども、もう自分には、ひとに可愛がられる資格が無いという、はっきりした自覚を持っていながらも、ひとは、生きて行かなければならぬものであります。
ひとに「愛される資格」が無くっても、ひとを「愛する資格」は、永遠に残されている筈であります。ひとの真の謙虚とは、その、愛するよろこびを知ることだと思います。
愛されるよろこびだけを求めているのは、それこそ野蛮な、無智な仕業しわざだと思います。ラプンツェルはいままで王子に、可愛がられる事ばかり考えていました。王子を愛する事を忘れていました。生れ出たわが子を愛する事をさえ、忘れていました。いやいや、わが子に嫉妬をさえ感じていたのです。そうして、自分が、もはや誰にも愛され得ないという事を知った時には、死にたい、いっそひと思いに殺して下さい、等と願うのです。
なんという、わがまま者。王子を、もっと愛してあげなければいけません。王子だって、淋しいお子です。ラプンツェルに死なれたら、どんなに力を落すでしょう。ラプンツェルは、王子の愛情に報いなければいけません。生きていたい、なんとかして生きたい。自分が、どんなにつらい目に遭っても、子供のために生きたい。その子を愛して、まるまると丈夫に育てたいと一すじに願う事こそ、まさしく、諦めを知った人間の謙虚な態度ではないでしょうか。自分は醜いから、ひとに愛される事は出来ないが、せめて人を、かげながら、こっそり愛して行こう、誰に知られずともよい、愛する事ほど大いなるよろこびは無いのだと、素直に諦めている女性こそ、まことに神の寵児ちょうじです。そのひとは、よし誰にも愛されずとも、神さまの大きい愛に包まれている筈です。

 


太宰に対して自殺オタクだろ?とネガティブなイメージを持ってる人は文章読んで少し驚かれたのかもしれません。
かなり常識的で思いやりがあり真実を見通し言葉にする力に優れていたのでは、と
考えられる文章を書いてます。

死なせてください、という言葉に対して
大変いじらしい謙虚な響きだけど、よく考えてみるとめちゃくちゃ自分勝手でうぬぼれが強くね?という指摘はすごく好きです。
さらには人に可愛がられることばかり考えているのです、と。
痛烈ですね。

 

人は誰でも人を愛する資格を永遠に残されるっているはずであって、
本当に謙虚な姿と言うのは人を愛する喜びを知ることであると言っています。
可愛がられることばかり考えるのではなくて、人を愛する喜びを知りなさい、これが真の謙虚さだと考えているようです。

 

この意見に対して僕は賛成であります。

すごくいいなと思います。
自分自身が自分ありきでばかり考えてしまっていて、
相手ありきで考えることができていない状態が僕にもありました。
独特な虚無感があります。
相手を思いやって話しているつもりの言葉が
特に相手ありきで考え抜いていない言葉であり、
謙虚なふり、謙虚なつもりで話した後、
独特な虚無感が訪れます。

真の謙虚とは人を愛する喜びを知ることだ。
人を愛する資格を存分に使うことによって、人から結果的に愛されることができればいいんじゃないかなと思います。
対人関係でお悩みの方はぜひ、まず人を愛する資格が自分にはある。
人を存分に愛してみる。
ただ人に愛される資格をばかり主張してはならない、
という太宰の主張を頭に浮かべてコミュニケーションをしてみてはいかがでしょうか?



それでは素敵な夜を。



おやすみなさい。